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東京高等裁判所 昭和38年(ラ)399号 決定

抗告人 社団医療法人 好生会 外一名

主文

本件抗告はいずれも棄却する。

理由

本件抗告の理由は、末尾添付の別紙記載のとおりである。

数個の不動産を競売すべき場合、これを各別に競売するか一括して競売するかは、原則として競売裁判所の裁量によるべきものであつて、各別に競売すべきことが法律上の売却条件をなすものではないと解するのが相当である。ただ、右不動産の一部に、債権者を異にする先順位の抵当権が設定されているもの、或いは、所有者を異にするものが存する場合には、当該不動産の売得金を明らかにするためこれらを別個に競売する必要を生ずるけれども、かかる場合、各個の不動産毎に評価を命ずる等前示売得金を算出し得べき手段を講じた上で、これら不動産をその他のものと一括競売したからといつて、必ずしも競売法三二条民訴六七二条所定の異議理由に該当するものではなく、従つて、これを以て競落許可決定取消の事由とはなし難い。

記録によると本件競売不動産(建物六筆、宅地五筆、畑二筆)のうち、建物二筆(家屋番号イ第五九八番及びイ第五九九番)及び宅地三筆(字大坪二〇三〇番ノ二、字辺田前二〇三六番ノ一、字大坪二五四六ノ一)には、それぞれ本件競売申立人株式会社千葉銀行に優先する債権者勝又豊次郎(配当要求申立人)の順位第一番の抵当権が設定されていること、及び、右競売不動産のうち宅地二筆(字大坪二〇三〇番ノ一、同二〇三一番ノ四)及び畑二筆は抗告人林英一郎の所有であり、その余はすべて抗告人債務者社団医療法人好生会の所有であることがそれぞれ認められるけれども、右競売物件たる建物及び宅地は、すべて抗告人社団医療法人好生会経営の病院及びその敷地として一括して利用されている関係上、原裁判所は鑑定人をして右建物及び宅地を一筆毎に評価させた上これを一括競売に付したものであること、記録中の評価書、上申書、競売調書に徴し明らかである。

然らば、右一括競売の故を以て本件競落許可決定を取消すべきものとする抗告人の主張は、前説示の理由により採用し難いのみならず、記録を精査しても他に右決定を違法と認むべき点はないから、本件各抗告はいずれもこれを棄却すべきものとし、主文のとおり決定する。

(裁判官 菊池庚子三 川添利起 山田忠治)

別紙 抗告の理由

一、債権者は債務者に対し別紙目録記載の物件について昭和三十七年十二月一日抵当権実行の申立を為し御庁昭和三七年(ケ)第三七号事件として同年十二月三日不動産競売開始決定となり次で昭和三十八年六月二十五日午前十時競売期日を開き競売物件(但し畑弐筆を除く)と一括して競売に付し競売申出人金武政は競売申出人として金九百拾七万円を以て競落し執行吏は同人を以て最高価競買人と定めた。而して同月二十七日御庁に於て同人の競落を許可した。

二、然れども右物件は土地(宅地)建物十六筆であつて各物件に対する抵当権設定は一様ではなく、或物件には、一、二、三、四番の抵当権を設定して居り、他の物件には内一、二の抵当権のみ設定あるのである。

然るに前示の如く一括して競売に付する場合には競売代金を配当するにつき混乱を生ずるを以て右様の場合には原則に従つて一筆毎に競売すべきものにして一括競売に付すべきものではない。

仍つて右競落許可決定は不服であるから茲に異議を申立てる。

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